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歯にヒビが入った時の治療法 〜抜歯を回避するために

2023年6月20日

歯にヒビが入り「抜歯」を宣告されることありませんか?完全に割れていると厳しいですが、ヒビの状態であれば、まだ抜歯しなくても済むかもしれません。そんな1例をご紹介します。

 

 

①なぜヒビが入るのか

歯にヒビが入るのは3つ理由があります。【①年齢 ②歯ぎしり食いしばり ③差し歯など歯の耐久性の問題】です。ヒビが入るのは仕方がないのですが、それが問題となる時とない時があります。生理的な問題であればいいのですが、後述するように症状が出ていると問題となります。

 

 

[1] 年齢によるもの

これは生理現象なので仕方がありません。理論的には歯を使わなければヒビは入りませんが、食事をする以上は不可避です。受け入れるしかありません。

 

 

 

[2]歯ぎしり・食いしばりによるもの

夜間に歯ぎしり・食いしばりがあると、歯がすり減る、ヒビが入ることがあります。就寝時の歯ぎしり食いしばりは100kg以上の力が入ります。食事している時の噛む力では歯がすり減ることはありません。骨よりも硬いと言われる歯がすり減るので、相当な力が掛かっています。歯ぎしり・食いしばりから歯を守るためにはマウスピースを装着するしかありません。寝ている時の話なので、意識的に止めることができませんので、守るしかないのが実情です。

 

 

 

[3]差し歯など歯の耐久性によるもの

虫歯治療や神経をとる処置、根管治療を行った場合、見た目は被せ物や詰め物で歯があるように見えますが、実際の歯はほとんど残っていないことがあります。銀歯などは噛む力で欠けることはありませんが、その分の力が残っている歯にかかります。その結果、歯が持っていかれるイメージです。銀歯が外れるなど、強い力が分散されればいいのですが、ガッツリ銀歯がはまっていると、過度な力が直接歯にかかるので、結果としてヒビが入ることがあります。場合によってはバキッとなって、歯が割れることもあります。

 

 

 

 

 

②ヒビが入った時の症状は?

これは原因や程度によって症状の有無、程度が異なりますが、神経が生きているか、死んでいるかも分かれ目です。なお、以下の場合わけで「浅い・深い」とありますが、ざっくりなので、厳密なところはここでは無視します。

 

[1] ヒビが浅い場合 (神経が生きている場合)

ここでは、神経にまで達していない状態とします。歯の神経がある場合は知覚過敏が生じます。冷たいものを飲むとしみるなどです。ただし、ヒビによるものか、単純な知覚過敏か、虫歯かの断定が見た目だけではできませんので、歯医者に行ってレントゲン撮影し、虫歯の有無をはっきりさせる必要があります。

 

 

[2] ヒビが深い場合 (神経が生きている場合)

ここでは、神経に達している、達する手前の状態とします。冷たいものがしみるだけでなく、温かいもので痛い、ものを噛むと痛い、あるいは違和感を生じます。ここまでくると神経に達している可能性が高いです。あいにく、この症状が出ると神経処置を行うか、様子を見て痛みが消えたと思ったら神経が死んでしまっていた、という結末になることが多いです。

 

 

 

[3] ヒビが浅い場合 (神経がない場合)

ここでは、根元付近で、根の先までは達していない状態とします。これは自覚症状は感じることはあまりありません。感じるとすれば、噛む時に違和感を感じるということでないでしょうか。この状態に早く気づければ、そして歯医者で状態を確認してもらうことが非常に大切です。どうしようもない場合もあれば、大きくヒビが入って抜歯になる前にケアできる場合があります。

 

 

 

[4] ヒビが深い場合 (神経がない場合)

ここでは根の先端までヒビが入っている状態とします。この場合は抜歯になる可能性があります。奥歯など大臼歯の場合は歯の根が複数本あるのでヒビ割れした根だけを抜いて、残りの歯を活かす方法(分割抜歯、ヘミセクション、トリセクションなど言います)があります。ただし、前歯など根が1本だけの場合は、割れてしまうと抜歯になります。

 

 

 

③ヒビの状態次第では歯を残せる可能性がある

ヒビがある程度で止まっていた場合は、それ以上割れないような治療をしていきます。例えばヒビが入っている部分を被せ物で覆ってしまうことで、拡がらないようにする方法や、差し歯であれば、歯の状態によっては差し歯の差す部分の材質を変更する、差す場所を変えるなどがあります。歯の位置や破折部位にもよりますが、場合によっては外科治療でヒビを補修する方法もあります。

 

 

 

 

④ヒビが入った歯を治療する実際 〜症例1  冷たいものがしみる〜

[1] 歯にヒビが入っています

これは冷たいものがしみる、噛むと違和感という主訴です。歯に詰め物がありますが、よく見ると薄くヒビが透けて見えます。

 

歯にヒビが入っていることでしみる、痛い症状が出ます

 

[2] ヒビを覆うために被せ物の厚みだけ削ります

治療の流れとしては「①経過観察」「②詰め物のやりかえ」などありますが、今回は治療選択肢の相談の上、「③ヒビを覆い隠すために被せ物にする」となりました。痛みが強い場合は「④神経をとる」という選択肢もありますが。なるべく神経を残したほうが歯の寿命が良いので、今回はこのような選択となりました。仮に神経をとる処置をしても、最終的には歯の強度耐久性の問題から被せ物になりますので、被せ物にして症状が消えれば、神経を取らずしてよかったなと前向きに思っていただければと思います。

 

詰め物を取り除き、歯を削っていくと、明らかなヒビ割れ、クラックtが確認できます。これが原因で神経に刺激が伝わりやすくなり「しみる」「痛い」の症状が出ます。

 

 

[3] 被せ物をします

被せ物は「銀歯」「CAD冠(プラスチック)」「セラミックス」という選択肢があります。セラミックスは保険外治療です。種類を相談の上、セラミックスで被せることになりました。

被せることで冷たいものなど刺激がヒビから遮断されます。治療後、結果として症状は無くなりました。ただし、ヒビ、クラックが入っていること、神経に影響が出ていたことは事実なので、今後、神経が慢性的に壊死していかなかどうかを見守る必要があります。

 

 

 

 

⑤ヒビが入った歯を治療する実際 〜症例2  歯の違和感、痛み〜

[1] 歯茎が腫れた (神経がない歯)

神経がない歯は、細菌が侵入すると、歯茎に炎症が起こります。結果として腫れ、痛みが出ます。あるいはニキビのような出来物が現れます。通常は歯の神経の管を通って歯茎や骨に感染していきますが、歯にヒビが入ると、そのヒビから侵入していきます。

 

歯根破折・ヒビ・クラック1

 

 

 

[2] ヒビを実際に確認します (外科治療)

まずは根の治療(根管治療)を行います。ただし、それでも改善はしないことがあります。その場合はヒビを修復、埋める必要があります。

どこにヒビがあるか確認をするためにも、外科治療として歯茎をめくり、歯全体を確認していきます。今回の症例では、歯にヒビが入っていることを確認しました。

 

歯根破折・ヒビ・クラック2

 

 

 

[3] ヒビを埋めます (外科治療)

歯のヒビを部分的に削り、接着剤を流し込みます。専門的ですが、一般的にはスーパーボンド、MTAセメントという類の医療機材を用います。

歯根破折・ヒビ・クラック3・スーパーボンド・MTA   歯根破折・ヒビ・クラック4・スーパーボンド・MTA

 

 

 

 

[4] 歯の先端を切断します(歯根端切除)

歯の根の先端3-4㎜には細菌が溜まりやすいと言われています。厳密には、目に見えない細かな管が集結しているため、細菌がそれぞれの管に集結しやすいためです。細菌は目に見えないため、根の先に細菌が集結しているという前提で、一般的には無難に切断を行います。

歯根破折・ヒビ・クラック5 歯根端切除

 

 

[5] 縫合します

やることを終えたら、歯茎を戻し、糸で縫います。1-2週間くらいで糸を抜きます。

歯根破折・ヒビ・クラック6

 

 

[6] 被せ物を作り、装着します

傷口が治れば、被せ物を装着し、終了です。あとは再発しないことを祈りつつ、経過を見ていきます。ヒビを修復し、歯茎や症状が改善したといえども、またヒビが入る可能性があります。見守っていく必要があります。

 

歯根破折・ヒビ・クラック7

 

歯根破折・ヒビ・クラック8

 

 

 

⑤まとめ

歯にヒビが入ると、神経が生きているか、抜いてあるかによっても症状や治療方法が違ってきます。真っ二つに割れてしまうと基本的には抜歯となります。治療するというよりは、現状を早期発見し、今以上に症状が悪化しないよう、ヒビが悪化しないような対応が必要です。

 

冷たいものがしみる、違和感があるなどは、ヒビによるものもあれば、単純に虫歯、歯周病、根が膿んできたなど、よくある類のこともあります。むしろヒビが原因という症状はどちらかというとマイナーです。どちらにしろ、症状があれば放置するのでなく早期発見、早期治療という観点から歯医者を受診して診てもらうことが大切です。

 
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