歯周病の治し方 〜歯磨き粉など自力で治せるか?〜
2022年4月21日
津市久居の歯医者「ナカニシ歯科医院」です。
歯周病の治し方として歯磨き粉などで自力で治せるかですが、結論は「初期〜軽度の歯周病」は治癒可能ですが、中等度以上であれば「自力+歯科医院での治療」が必要になります。今回は歯周病と治し方、歯磨き粉などのお話です。
歯周病は、歯の周りの組織である歯肉や骨が病的に溶けていく病気です。生活習慣病であり慢性疾患でもあります。自覚症状がなく、むしろ症状が出た時はかなり進行していることが多いです。
厚生労働省が実施した、2016年「歯科疾患実態調査」では、35−59歳の人の約7割が歯周病という結果が出ています。
原因は歯の周りについた細菌の塊「プラーク」です。ヌルヌルしたもので、有機物や細菌で形成されるため「バイオフィルム」とも呼ばれます。これは一種の膜のため、そこには抗生剤や免疫など化学的な作用が反応しません。
これは歯ブラシで機械的に取り除く必要があります。なので、「歯磨きをしない」「歯磨きをしているが、実際は汚れを取り切れていない」など、要は「磨けていない」と、次々とプラークがたまります。
これを放置すると虫歯菌のほか、歯周病菌が繁殖していきます。こうなると次々の菌が繁殖し、一方でプラークも溜まっていくという負の連鎖が始まります。結果、歯を磨かないと虫歯菌、歯周病菌の温床になっていきます。さらに、放置するほど歯ブラシでも取れなくなってきます。ここまでくると歯科専用のブラシで取り除くことになります。
歯周病を治癒に導く自分でできることは【歯ブラシ・歯間ブラシ・歯磨き粉】の3つが大切です。歯周病が進行する原因として歯周病菌と歯の汚れがあります。歯の汚れは歯ブラシ、歯間ブラシで除去し、歯周病菌は歯磨き粉の成分でカバーしていきます。
基本的に歯の汚れは歯と歯の間に溜まりやすいです。そのため、歯と歯の間に歯石が溜まっていき、骨が溶けていきます。そこで歯間ブラシが大切です。歯間ブラシにはサイズがありますので、歯と歯に隙間がないひとはデンタルフロスか、歯間ブラシのSサイズを、隙間がある人はMサイズを目安にしましょう。メーカーによりサイズ展開が違いますので、自分にあったものを模索する必要があります。
歯磨き粉は、正直なところ値段が高いものがより良い成分が多いです。もし歯周病のみに特化したものを選ぶ場合は「IPMP」という成分が含まれているものを選択しましょう。よく歯周病用の歯磨き粉として「CPC」というものがあります。CPCは表面に作用しますが、IPMPは汚れの内側にも作用していくため、より効果的な成分です。最低限このIPMPが含まれているものを選択し、あとは自分の好みのタイプを選べばいいかと思います。
自分でできることをお話ししてきましたが、最終的に自分で治せるかどうかですが、結論から言うと予防はできますが完全に治すことはできません。歯茎の炎症だけなら治癒できますが、ついてしまった歯石は歯ブラシでは取れないので、これだけは歯科医院で除去してもらうことが大切です。言い換えると、歯石がなくなれば、あとは再び汚れがつかないように自分で予防するということになります。歯石がついてるから歯ブラシは諦めようというのはいけません。確かに歯石がついていると治るものも治りませんが、最低限歯ブラシで取れる汚れがありますのでその最低限の汚れを取る努力は大切です。
毎日の歯ブラシが何よりも大切です。【①毎食後、寝る前に歯を磨く ②歯ブラシを月1回は交換する】この2点をしっかり守る必要があります。お仕事でなかなか歯ブラシができない人も、できる限り時間を作りましょう。本当に磨く時間を作れない人は、せめて寝る前は重点的に磨きましょう。
日頃は会話などで出てくる唾液や飲料水などで歯の汚れが洗い流されることがありますが、寝ている時は唾液も出ないため、歯周病菌が多く繁殖していきます。朝起きると口がネバネバするというのはこれが原因です。
歯ブラシは月1回交換しましょう。毛先が広がると、歯ブラシの汚れの除去率は40%低下すると言われています。つまり、交換しないまま使っている歯ブラシでは、時間をかけて磨いてもほとんど汚れが取れていないことになります。これでは一生懸命磨いているのも悲しい結果になります。
歯科医院は毎日通えません。なので、毎日の歯の掃除は自分で行います。そして、歯ブラシでは取れない汚れ、つまり歯石など歯科医院で取ることになります。一方で、詰め物や被せ物の形がおかしいと、そこに汚れがこびりついてしまいます。その場合は詰め物や被せ物を作り替える必要があります。
歯科医院ですることは主に歯石取りや合っていない詰め物被せ物を作り替え、汚れが溜まりにくい環境づくりとなります。もちろん他にも多くのことをやりますが、ざっくりなイメージとして捉えていただければと思います。
歯周病は状態次第では自分で治すことができますが、現状の把握のためにも歯科医院を受診して確認する必要があります。歯石がついているからといって自力で治すのをあきらめるのではなく、今以上に汚れや歯石がつかないために歯ブラシなどを今以上に頑張るという努力が悪化防止となります。口をきれいにするということは口臭予防や虫歯予防にも繋がりますので、自分の健康のためにも大切です。