親知らずの抜歯や抜き方、痛みや腫れなどのリスクについて
2021年2月26日
津市久居の歯医者、歯科医院の「ナカニシ歯科医院」です。
親知らず抜かないといけないと思っていても、なかなか踏み出せないことありませんか??今日はそんな親知らずについてです。
高校生で生えてくる子もいますが、一般的には20歳を超え、30歳手前までにゆっくりと生えてきます。親知らずは生えてくるものの、口の中にスペースがないため、変な方向に生えてくることが多いです。
そうなると、そんな狭いところに生えてくるので歯ブラシで非常に磨きにくいです。磨きたくても歯ブラシの先が頬っぺたにぶつかるので、物理的に磨けないことが多いです。
このように物理的な問題から「歯茎の腫れ」「痛み」「虫歯」になりやすいです。
ましてや、必要な歯である、親知らずの手前の歯が虫歯になると大変です。
親知らずが正常通り真っ直ぐ出てくるとまだいいのですが、真横など変な方向に出てくることがあります。それを放置すると「隣の歯が虫歯になる」「腫れて痛みが出る」「歯周病として骨が溶けていく」可能性があります。症状が出ると、親知らずの手前の歯がダメージを受け、人生において必要な歯が親知らずのせいで崩壊していきます。そうなる前に親知らずを抜いて置くことが大切です。
親知らずを抜くメリットがありますが、一方でデメリットもあります。親知らずの状態にもよりますが、どこかの歯が抜歯になったときに、親知らずがあると移植することができます。もちろんこれは人によりますので、絶対ではありません。
言い方、考え方にもよりますが、親知らずの周囲がしっかりと清掃、管理できているのであれば抜かなくてもいいかもしれません。他の歯が崩壊し抜歯になる可能性があれば、親知らずを移植するために残して置くこともあります。逆に、虫歯など何もない場合は親知らずを残しておいても移植には使わないだろうという点で抜歯することもあります。要するに、人によって抜くメリットデメリットが多少変わります。
ただし、もし変な方向に生えているのであれば、人生において遅かれ早かれ抜くことが多いです。それは繰り返しにもなりますが、年齢が上がるとともに生じるリスクがあります。
そのため、症状がなくても人生におけるリスクを踏まえて抜歯を選択することがあります。
もちろん抜歯は大変ですが、人生においていつか抜くのであれば、免疫力を考えると早い方が楽ではあります。
変な方向から出ていると、そのまま簡単には抜けません。一般的には、歯を分割し、小さくして順番に抜いていくことになります。
最終的には状態見て縫合を行います。これは約1週間後に糸抜きを行います。
親知らずの周りには「下歯槽神経」という顎の神経があります。親知らずを抜くときに、この神経を傷つける可能性があります。傷つけると唇や顎の周囲の神経が痺れ、温度や触感に対して鈍感になります。麻酔をしている時のようになります。
もし痺れが出た場合は経過観察、投薬、大学病院等への紹介となります。もちろん切断されているわけではないのでいつかは回復しますが、治癒期間は数か月〜数年、場合によってはそれ以上かかることもあります。
写真で親知らずがあります。
この親知らずの左側の根が、顎の神経と重なっています。
顎の神経を図示した状態です。このように顎の神経が走っていますので、親知らずを抜くときはこの神経を傷つけるかどうかのリスク判断が必要になります。
通常のレントゲンでは二次元なのでよくわかりませんが、CTでは3次元的に位置関係がわかります
CT画像で親知らずと神経との位置関係を見ていきます。
親知らずと顎の神経との位置関係がわかりました。
黄色の矢印で指している黒い丸が顎の神経です。
すぐ近くに親知らずの根の先があります。
このように、レントゲンではざっくりしかわかりませんが、CT画像では具体的に、詳細がわかります。
歯科ではCTによって詳細がはっきりわかるようになりました。言い換えるとCTがないと細かいことが何もわからないということにもなります。親知らずを抜歯するときは、顎の神経(下槽管)を傷つけるかどうかのリスク判断としてCT撮影が望ましいでしょう。
これは歯科医院の考え方、技術の問題もあります。当院の場合、分割するときに神経を損傷させる可能性があれば歯科口腔外科に紹介させていただきます。損傷させる可能性が低いと判断すれば、当院にて抜歯を行います。
神経と歯の根が接触、密接している場合は2回法という術式を取ることもあります。これは、歯の頭を抜き、歯の根はそのまま放置します。3ヶ月〜半年、1年など、時間を置くと、残された歯の根が伸びてきます。そうすることで神経から伸びた分だけ離れるため、神経麻痺のリスクを回避することができます。放置する期間は決まってません。要は神経から離れてくるまで期間を置きます。
上の親知らずは下顎と違い分割せずに抜けることが多いです。それは骨の構造が違うからです。下の親知らずは真上から抜き取りますが、上の親知らずは真上、真横とアプローチの仕方、範囲が違います。
もちろん、必要に応じて分割することもあります。
上の歯は「上顎洞」という鼻の穴があります。親知らずの根っこがこの上顎洞に入り込んでいる場合、歯を抜くと上顎洞に穴があくことがあります。穴があくと、例えば水を口に含むと鼻から水が漏れ出るという現象が起こります。
穴が空いた場合、その大きさにもよりますが、通常は自然治癒、自然封鎖するまで経過観察を行います。その間は感染、炎症が起こらないように抗生剤を服用していただきます。
あまりに封鎖しない場合は止血剤などを入れて縫合封鎖、場合によっては歯肉移植などを検討します。一般的には縫合封鎖はたまにありますが、移植まで行うケースは稀です。ほとんどないと言っても過言ではありません。
一方、歯の根などが折れて、上顎洞へ迷入することもあります。その時は摘出を考えますが、状態次第では大学病院等への紹介、精査となります。
迷入した場合も感染炎症が起こらないように抗生剤を服用していただきます。
上記のリスク判断になります。明らかに穴が開く場合は抜歯せず経過観察を行います。矯正治療など、どうしても抜歯しないといけない場合は穴が開くことに同意を得た上で抜歯を行います。
当院の場合、抜歯したときにかなりの穴が開くとあらかじめ推測できる場合は歯科口腔外科に紹介します。ただし、リスクと抜歯するメリットを比較したときに、メリットが乏しい場合は経過観察、抜かないということを選択、ご提案します。
ここからは親知らずを抜くことにおいて上下共通する内容です。主に治り方についてです。
抜歯後は数日は「痛み」「腫れ」が出ます。
麻酔が切れた当日がピークです。そこからは徐々に減少していきます。個人差にもよりますが、「何も痛くなかった」という方もいれば「1−2週間くらい痛かった」という方もいます。親知らずの状態は人それぞれのため痛みの程度にも差が大きく出ます。
術後2−3日がピークと言われています。もちろん1週間で引く方もいます。個人差があります。
稀ですが術後、顔や喉の皮膚が内出血で暗赤色になることがあります。日が経つにつれ元に戻りますが、気になる方は隠す、あるいは休みのときに抜くなど日程調整が望ましいでしょう。
特に下の親知らずを抜いた場合は、腫れることが多いです。
腫れることで、顎が開けにくくなることや、飲食で飲み込むときに痛みが伴うことがあります。開口障害、嚥下痛ともいいます。
腫れ、炎症が治るとともに引いていきます。
当院の場合、親知らずの状態にもよりますが、実際の処置時間は10-30分程度です。ただし、麻酔、説明、確認、術後説明、会計なども含めていくと、実際の歯科医院での滞在時間は40-70分程度です。もちろん、状態次第では伸びることもありますので、あくまで参考の時間と捉えていただきます。
費用は保険治療で約5,000-10,000円です。範囲にばらつきがあるのは、必要なレントゲン検査、CT検査などで左右されるからです。1万円超えないくらいと考えていただければと思います。
親知らずは抜くメリット、デメリット、リスクがあります。それらをしっかりとご理解いただいた上で「今抜歯するのか」「経過観察するのか」などを歯科医院で十分説明を受けた上で、治療の選択を考えていただくことが大切です。
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