【歯科医師が解説】埋伏過剰歯とは?小児矯正の前に知っておきたい抜歯の理由とタイミング
2026年8月23日
この記事のポイント(結論)
**埋伏過剰歯(まいふくかじょうし)**は、あごの骨の中に埋まっている「本来の数より余分に作られた歯」のことです。
放置すると、永久歯が正常に生えてこない原因や、将来的な矯正治療が必要になるほどの歯並びの悪化を招きます。
抜歯の適切なタイミングは、お子様の年齢や小児矯正の開始時期などによって異なります。
発見次第すぐに抜くとは限らず、適切な時期を見極めるための経過観察が重要です。
人間の歯は、乳歯が20本、永久歯が28本(親知らずを含めると32本)と決まっています。この決められた数よりも多く作られてしまった歯を**過剰歯(かじょうし)**と呼びます。
その中でも、歯ぐきやあごの骨の中に完全に埋まっていて外からは見えない状態のものを**「埋伏過剰歯(まいふくかじょうし)」と言います。上の前歯の真ん中付近(上顎正中過剰歯)に発生することが最も多く、定期検診や小児矯正**の相談時のレントゲン撮影で偶然発見されるケースがほとんどです。
「痛みがなければそのままにしておいても良いのでは?」と思われるかもしれませんが、埋伏過剰歯を放置すると以下のようなリスクが生じるため、基本的には抜歯が推奨されます。
骨の中に過剰歯が障害物として存在することで、本来生えてくるはずの永久歯がスムーズに生えてこられなくなることがあります。
過剰歯が永久歯の根っこを圧迫することで、前歯にすき間ができたり(正中離開)、永久歯がねじれて生えてきたりと、歯列に悪影響を及ぼします。その結果、本来であれば必要なかったはずの複雑な矯正治療が必要になってしまうケースも少なくありません。
稀ではありますが、埋まっている過剰歯が隣り合う永久歯の根を溶かしてしまったり、過剰歯の周りに水風船のような袋(嚢胞)ができ、それが大きくなることで周囲の骨を圧迫したりすることがあります。
抜歯の時期については、「見つけたらすぐに抜く」場合と、「安全に抜ける時期まで待つ」場合があります。
早期に抜歯するケース: すでに永久歯の生え変わりに悪影響が出ている場合や、小児矯正の治療計画を進める上で抜歯が不可欠な場合。
経過観察をするケース: 過剰歯の位置が深く、周りの健康な永久歯の根や神経を傷つけるリスクが高い場合。少し歯が移動して安全に抜歯できるようになるまで成長を待ちます。
手術は原則として局所麻酔をしっかり効かせてから行います。そのため、治療中に強い痛みを感じることはほとんどありません。麻酔が切れた後に腫れや痛みが出ることがありますが、処方される痛み止めでコントロール可能な範囲です。
骨の中に埋まっている歯だからこそ、「本当に抜く必要があるのか」「どのような手術になるのか」など、ご不安も大きいかと思います。
当院では事前の説明(インフォームドコンセント)を最も大切にしています。平面のレントゲンやCT画像で、過剰歯が「どこに」「どのような向きで」埋まっているのかを立体的な模型で直接見ていただけるため、見えない部分の状態を視覚的に理解でき、ご家族皆様が納得した上で治療に進んでいただくことが可能です。
また、抜歯をして終わりではなく、その後の歯並びのフォローも重要です。当院では、ワイヤーを使用しないプレオルソや、王道の拡大床といった小児矯正をはじめ、必要に応じた本格的な矯正治療にも対応しております。過剰歯の抜歯からその後の健やかな歯列育成まで、一貫してサポートできる体制を整えています。
実際の埋伏過剰歯の症例をご紹介します。
「上の前歯のすき間がなかなか閉じない(または、片方の前歯だけなかなか生えてこない)」と保護者の方が気になりご来院されました。お口全体のレントゲン撮影を行ったところ、上の前歯の歯ぐきの深い位置に、前歯の根に挟まれるように、埋伏過剰歯が1本発見されました。
1. CT画像による丁寧な事前説明
今回のケースは過剰歯が骨の深い位置にあり、平面のレントゲン画像だけでは状態が把握しにくかったため、CT画像で過剰歯が永久歯の根にどのように干渉しているか、どのような向きで埋まっているかを視覚的にご確認いただき、ご家族皆様にしっかりご納得いただいた上で治療計画を立てました。
2. 局所麻酔下での抜歯処置
十分に局所麻酔を効かせた上で、歯ぐきを少し開いて過剰歯を丁寧に抜歯しました。事前のCT画像によるシミュレーションがあったため、処置自体は約20分程度でスムーズに終了しました。
3. 術後の経過と今後のフォロー
抜いたことによる多少の痛みがありますが、痛み止めや抗生剤を飲むのほどの事態にはなりませんでした。基本的に、上顎の埋伏過剰歯の抜歯は、処置後の痛みや腫れはあまり出ないことが多いです。過剰歯(障害物)がなくなったことで、現在は本来の永久歯が自然な位置へ生えてきつつあります。
■ 治療の概要
治療内容: 局所麻酔下での埋伏過剰歯の抜歯
治療期間・回数: 約1ヶ月・約3回(CT検査、抜歯、抜糸など)
費用: 健康保険適用(3割負担)で約1万円 ※初再診料・検査料等は別途 自治体によっては、現物給付のため負担金なしとなります。
リスク・副作用: 外科処置を伴うため、術後数日間は腫れや痛み、わずかな出血が生じる場合があります。処方薬を正しく服用いただき、安静にお過ごしいただくことで徐々に回復します。
ここでは、埋伏過剰歯について患者様からよくいただくご質問にお答えします。
Q. 入院は必要ですか?
A. 多くの場合は外来診療(日帰り)での局所麻酔による抜歯が可能です。ただし、極端に深い位置にある場合や、小さなお子様で長時間の治療に耐えるのが難しく全身麻酔が必要と判断した場合は、提携する総合病院等の口腔外科をご紹介させていただくことがあります。
Q. 抜歯の後の腫れはどれくらい続きますか?
A. 抜歯後、2〜3日目をピークに腫れが出ることがあります。通常は1週間程度で徐々に落ち着いていきます。術後は激しい運動や長風呂を避け、安静にお過ごしください。
Q. 過剰歯の原因は何ですか?
A. 歯の卵(歯胚)が作られる段階で、余分に分裂してしまったことが原因とされていますが、はっきりとした根本的な理由は解明されていません。遺伝的な要因も関係していると言われています。
埋伏過剰歯は、早期に発見し、適切なタイミングで治療に介入することが、将来の美しい歯並びと健康なお口を守る鍵となります。
「前歯のすき間がなかなか閉じない」「左右で歯の生え替わりの時期が極端に違う」といったお悩みのほか、小児矯正をご検討中の方も、気になることがありましたらどうぞお気軽に当院までご相談ください。